ヒツジ
ヒツジ(ひつじ)は、鯨偶蹄目ウシ科ヤギ亜科の動物をいう。紀元前7000-6000年ころの西アジアから中央アジア周辺で家畜化されたと考えられている。一般にヒツジの祖先と考えられている野生ヒツジは4種あり、北アフリカから中央アジアにかけて広く分布していたムフロン、中央アジアから蒙古にかけて生息していたアルガリ、イラン、アフガニスタンからインド、チベットにかけて分布するウリアル(ユリアルともいう)、そして北アジアと北アメリカに生息するビッグホーンである。このうちビッグホーンはアメリカアルガリといっていたので、ビッグホーンを除く3種という見方もある。
ヒツジ | |
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読み | ひつじ |
英語表記 | sheep |
学名 | Ovis aries |
別名 | 緬羊、綿羊 めん羊 メンヨウ |
これらの種を祖先とする多元説と、いずれか1種の単元説がある。単元説では、かつてはムフロン説が有力であったが、現在はアルガリ説が有望視されている。砂漠や山岳地帯など、さまざまな環境に適応した種があり、現在はおもな品種だけでも1000種以上、細かく分けると3000種を超えるといわれている。
ヒツジの用途は多く、羊肉(緬羊肉)と羊毛を筆頭に、羊乳(おもにヨーグルトやチーズに加工、ロックフォールチーズ、ペコリーノ、フェタチーズなど)、羊腸、羊革(ラムスキン、シープスキン、ムートン、アストラカン)のほか、脂肪・羊毛脂(食用や石鹸、化粧品の材料)や羊皮(羊皮紙、タンバリンの皮)、糞(肥料)、骨・角(飼肥料、ボタン、楽器)、血液(医学検査・製薬原料)の利用もある。
ヒツジの身体的特徴として、2つに割れた蹄や、反芻胃をもち、角は有角と無角の両方がある。上顎は、切歯と犬歯がなく、かわりに歯床板がみられる。下顎は、犬歯がなく、切歯と臼歯の間に隙間がある。
1996年7月5日、スコットランドのロスリン研究所で、世界初の体細胞クローン動物(ヒツジ)のドリーが誕生した。ドリーは、6歳の雌羊(フィンドーセット種)の乳腺細胞の核を、除核した未受精卵に移植して誕生したもので、クローン技術のみならず倫理面においても大きな話題となった。2003年2月14日に進行性のヒツジ肺腺腫をおこしたことから、6歳で安楽死となった。
ヒツジは、緬羊や綿羊、めん羊、メンヨウと表記することもある。とくに毛用のヒツジを指すときに使われる傾向がある。
家畜化の歴史
ヒツジの家畜化は、紀元前7000-6000年ころの西アジアから中央アジア周辺で家畜化されたと考えられている。まず食用(肉用、脂用)として家畜化し、やがて乳用や毛用としても利用、改良されていったと考えられている。
羊肉に関しては、ヤギと同様に山岳地帯や砂漠など過酷な自然環境下で、古今を通じて貴重なタンパク源であった。また、イスラム教のブタやヒンズー教のウシのような宗教的な禁忌がない点も、家畜として世界に広く普及したと思われる。
栄養源としての脂肪は、とくに遊牧民にとって重要であり、ヒツジが家畜化される大きな要因であったと考えられている。その理由として、脂肪蓄積の多いブタは、遊牧には不向きであり、宗教的にも忌避される場合があったこと。また、過酷な環境に耐えられるヤギは、乳肉の生産量こそ多いものの、脂肪の蓄積が少ないことが挙げられる。ヒツジから効率よく脂肪を摂取できる脂尾羊や脂臀羊は、その好例である。
羊毛は、野生のヒツジは、上毛(粗毛;ケンプ)が多く、下毛(緬毛;ウール)が少なかったため、当初は換毛で抜け落ちた上毛の利用が主であった。家畜化後に改良が始まり、紀元前4000年ころには、ウールタイプの分化がみられ、現在ウール生産の主流となっているメリノーは、1300年ころにスペインで作出された。その後、メリノー以外のヒツジは、雑種と未改良種(野生羊)に大別され、英国やニュージーランドでさまざまな性質の異なるヒツジと交配させて、多くの雑種を作出してきた。
ヒツジの分類
用途による分類
毛用、肉用、乳用の3つのタイプに分類されるほか、毛肉兼用種、肉皮兼用種といった兼用種が存在する。
英語の呼称
年齢や状態などにより英語の呼称が変わる。以下に例を示す。
(参考:FAO Vocabularium, Animal Husbandry 1959)
総称 | sheep | ||
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成畜 | 雄:ram,tup | ||
雌:ewe | |||
子畜 | 離乳前:lamb | ||
離乳から第1回剪毛まで:hogg,teg | |||
雄子 | (一般):tup lamb,ram lamb | ||
(離乳から第1回剪毛まで):hoggerel,hogget,tup teg,hogg,tup hogg,hogget ram | |||
雌子 | (一般):ewe lamb,gimmer lamb,chilver | ||
(離乳から第1回剪毛まで):gimmer hogg,ewe hogg,ewe teg,shedder ewe | |||
去勢畜 | 去勢雄 | (一般):wether | |
(離乳から第1回剪毛まで):hogg lamb,wether hogg | |||
状態 | 雄 | (第1回剪毛から第2回剪毛まで):shearling ram,shear hogg,diamond ram,one-shear tup | |
(第2回剪毛から第3回剪毛まで):two-shear ram,two-shear tup | |||
(第3回剪毛から第4回剪毛まで):three-shear ram,three-shear tup | |||
(第4回剪毛以降):aged ram,aged tup | |||
(種雄):stud ram | |||
雌 | (第1回剪毛から第2回剪毛まで):shearling ewe,shearling gimmer,theave,double toothed ewe,double toothed gimmer,two toothed ewe,fall yearling | ||
(第2回剪毛から第3回剪毛まで):two-shear ewe | |||
(第3回剪毛から第4回剪毛まで):three-shear ewe,winter ewe | |||
(第4回剪毛以降):aged ewe,three winter ewe |
このページを版も含めて参考文献として引用する場合は、 |
日本畜産学会編. "ヒツジ - 畜産用語辞典." Internet: https://animalwiki.yokendo.com/index.php?curid=5932&oldid=12664, 2023-03-31 [2024-11-21]. |
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