ヤギ

提供:畜産用語辞典
ヤギ
ヤギ
日本ザーネン(ヤギ品種)(雌)
(独)家畜改良センター提供
読み やぎ
英語表記 goat
学名 Capra hircus

ヤギ(やぎ)は、鯨偶蹄目ウシ科ヤギ属の動物をいう。山岳地帯に生息する野生のベゾアールを祖とし、西アジアで家畜化された。家畜化後、その分布拡大に伴い、東に広がった集団には野生のマルコールが交雑し、西に広がった集団には野生のアイベックスが交雑し、さまざまな形態的特徴を獲得するに至った。また、熱帯雨林、砂漠、高山地域など、南極大陸を除く幅広い気候帯で飼育されており、世界で1153品種以上があるとされている。

ヤギはを利用した最古の家畜動物とされており、粗食や粗放にも強く、ウシより小柄で飼育が容易なことから「貧者の牛」とも呼ばれる。乳質乳牛とほぼ同等、乳量ヒツジ以上ということもあり、現在でも中国、インドを中心としたアジアやアフリカで多く飼養されている。日本でも戦後しばらくまでは、乳利用のために多くの農家で飼育されていた。

カシミヤアンゴラから取れるは、それぞれカシミヤ、モヘアの名称で流通し、獣毛のなかでは、もっとも光沢感があるのが特長である。ほかにも肌触りがよく、軽い、暖かい、保湿性があるなどの長所も多いが、1頭あたりの産毛量が少ないことから、非常に高価である。とくにカシミヤは「繊維の宝石」ともいわれている。毛織物以外にも、毛筆や化粧筆の原料として利用され、採取する品種や部位により廉価なものから最高級品まで多岐にわたる。

肉に関しては、アジアや北アフリカ、メキシコでは普段からよく食べられており、伝統料理として祭事や祝いごとに供されることもある。日本ではあまり食べる機会がないが、沖縄などの南西諸島では、山羊汁や山羊刺しなどの郷土料理として定着している。

ヤギの身体的特徴として、2つに割れたや、反芻胃をもち、はあるものとないものの両方ががある。またヤギなどの反芻動物は、上顎の切歯と犬歯がなく、かわりに歯床板がみられる。オスにはあごひげがあるものが多い。

家畜化の歴史

ヤギの家畜化はイヌの次に古く、およそ10,000~12,000年前に家畜化されたと推定されている。まず食用(肉用)に家畜化し、やがて乳用や毛用としても利用、改良されていったと考えられている。なかでも、ウシよりも早く家畜化されたことから、最古の乳用家畜となった。バターチーズなどの乳製品ヤギ乳から始まった。また近年では、牛乳アレルギーの代替品や、乳糖が少ないなど消化にやさしい乳として注目され、人間のみならずイヌやネコ用のヤギ乳商品も開発されている。 肉に関しては、冷涼な気候や乾燥にも強いことから山岳地帯や砂漠などで、古今を通じて貴重なタンパク源であった。また、イスラム教のブタやヒンズー教のウシのような宗教的な禁忌がない点も、家畜として世界に広く普及したと思われる。 ほかに、ヤギの雑食性を利用して、空き地、耕作放棄地の雑草や果樹園の下草を除去する役畜としての活用もある。

ヤギの分類

形態的分類

  1. ベゾアール型
    ヨーロッパの乳用種やアフリカおよび東南アジアの小型肉用種で、は小さく直立し、がねじれていない
  2. サバンナ型
    インドおよび西アジア乾燥地帯の毛用種で、下垂した耳とねじれた角をもつ
  3. ジャムナパリ型
    インドのジャムナパリ,アフリカのヌビアンなど鼻面が凸隆していて、下垂した長い耳をもつ

用途による分類

肉用、乳用、毛/毛皮用の3つのタイプに分類されるほか、乳肉兼用、乳肉毛兼用といった兼用種が存在する。

  1. 肉用種
    ボアカンビン・カチャンなど。
  2. 乳用種
    ザーネン日本ザーネンなど。
  3. 毛用種
    アンゴラ、カシミヤなど。
  4. 兼用種
    乳肉兼用種は、ジャムナパリ、スパニッシュなど、乳肉毛兼用種はヌビアンがある。

英語の呼称

年齢や状態などにより英語の呼称が変わる。以下に例を示す。
(参考:FAO Vocabularium, Animal Husbandry 1959)

総称 goat
成畜 :buck,billy,stud goat
:she-goat,female goat
子畜 総称:kid
雄子 (一般):male kid
(1~2年):buckling
雌子 (一般):female kid
(1~2年,未経産):goatling

身体各部の名称(関連図)

外貌

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日本畜産学会編. "ヤギ - 畜産用語辞典." Internet: https://animalwiki.yokendo.com/index.php?curid=5886&oldid=12753, 2023-10-23 [2023-10-24].
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